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下請支払遅延等防止法

1 下請代金支払遅延等防止法の内容
本法の適用範囲
ア 親事業者・下請事業者の定義(第2条第7項,8項)
イ 製造委託(第2条第1項)
ウ 修理委託(第2条第2項)
エ 情報成果物作成委託(第2条第3項)
オ 役務提供委託(第2条第4項)
カ トンネル会社の規制(第2条第9項)
親事業者の義務
ア 書面の交付義務(第3条)
イ 支払期日を定める義務(第2条の2)
ウ 書類の作成・保存義務(第5条)
エ 遅延利息の支払義務(第4条の2)
親事業者の禁止事項
ア 買いたたきの禁止(第4条第1項第5号)
イ 受領拒否の禁止(第4条第1項第1号)
ウ 返品の禁止(第4条第1項第4号)
エ 下請代金の減額の禁止(第4条第1項第3号)
オ 下請代金の支払遅延の禁止(第4条第1項第2号)
カ 割引困難な手形の交付の禁止(第4条第2項第2号)
キ 購入・利用強制の禁止(第4条第1項第6号)
ク 不当な経済上の利益の提供要請の禁止(第4条第2項第3号)
ケ 不当な給付内容の変更及び不当なやり直しの禁止(第4条第2項第4号)
コ 報復措置の禁止(第4条第1項第7号)
サ 有償支給原材料等の対価の早期決済の禁止(第4条第2項第1号)
立入検査・改善勧告・罰則等(第6条,7条,9条〜12条)
ア 報告・立入検査
イ 改善勧告等
ウ 罰則
本法事件処理フローチャート
2 電磁的方法による発注・取引記録の保存
(1) 関係規定
(2) 書面の交付に代えることができる電磁的記録の提供の方法及びその留意点
(3) 取引記録の作成・保存の要件(第5条関係)
ア 親事業者・下請事業者の定義(第2条第7項,8項)
  本法は,適用の対象となる下請取引の範囲を@取引当事者の資本金(又は出資金の総額。以下同じ。)の区分とA取引の内容(製造委託,修理委託,情報成果物作成委託又は役務提供委託)の両面から定めており,この二つの条件が重なった取引に本法が適用される。
親事業者と下請事業者の範囲
・ 物品の製造委託・修理委託
・ プログラムの作成委託
・ 運送,物品の倉庫における保管及び情報処理に係る役務提供委託
親事業者 下請事業者
資本金3億円超の法人事業者 資本金3億円以下の法人事業者(又は個人事業者)
資本金1千万円超3億円以下の法人事業者 資本金1千万円以下の法人事業者(又は個人事業者)
・ 情報成果物作成委託(プログラムの作成を除く。)
・ 役務提供委託(運送,物品の倉庫における保管及び情報処理を除く。)
親事業者 下請事業者
資本金5千万円超の法人事業者 資本金5千万円以下の法人事業者(又は個人事業者)
資本金1千万円超5千万円以下の法人事業者 資本金1千万円以下の法人事業者(又は個人事業者)
※ 「プログラムの作成」と「情報処理」の違いについて
「プログラムの作成」とは,電子計算機を機能させて,一の結果を得ることができるようにこれに対応する指令を組み合わせたものとして表現したものを作成することをいう。本法ではソフトウェア,例えば,プログラム自体,制作過程のシステム設計書等の作成をいう。
「情報処理」とは,電子計算機を用いて,計算,検索等の作業を行うことで,プログラムの作成に該当しないものをいう。例えば,受託計算サービス,情報処理システム(電子計算機及びプログラムの集合体であって,情報処理の業務を一体的に行うよう構成されたものをいう。)の運用(データ入出力,稼動管理,障害管理,資源管理,セキュリティ管理等)を行うこと等をいう。
イ 製造委託(第2条第1項)
第2条(定義)
この法律で「製造委託」とは,事業者が業として行う販売若しくは業として請け負う製造(加工を含む。以下同じ。)の目的物たる物品若しくはその半製品,部品,附属品若しくは原材料若しくはこれらの製造に用いる金型又は業として行う物品の修理に必要な部品若しくは原材料の製造を他の事業者に委託すること及び事業者がその使用し又は消費する物品の製造を業として行う場合にその物品若しくはその半製品,部品,附属品若しくは原材料又はこれらの製造に用いる金型の製造を他の事業者に委託することをいう。
「製造委託」とは,
事業者(製造業者のほか商社や百貨店などの販売事業者も含まれる。)が他の事業者に物品(その半製品,部品,附属品,原材料及びこれらの製造に用いる金型を含む。)の規格・品質・性能・形状・デザイン・ブランドなどを指定して製造(加工を含む。)を依頼する場合をいう。
「業として」とは,
事業者が,ある行為を反復継続的に行っており,社会通念上,事業の遂行とみることができる場合を指す。
「製造」とは,
原材料たる物品に一定の工作を加えて新たな物品を作り出すことをいい,「加工」とは,原材料たる物品に一定の工作を加えることによって,一定の価値を付加することをいう。
「物品」とは,
動産をいい,不動産は含まれない。物品そのものの製造委託は,一般的に製品外注とか完成品外注と呼ばれている下請取引である。
「半製品」とは,
目的物たる物品の製造過程における製造物をいう。
「部品」とは,
目的物たる物品にそのままの状態で取り付けられ,物品の一部を構成することとなる製造物をいう。
「附属品」とは,
目的物たる物品にそのまま取り付けられたり目的物たる物品に附属されることによって,その効用を増加させる製造物をいい,例えば,
@ 商品や製品に付着させる銘板・ラベルなど
A 商品や製品を使用するときなどに必要な取扱説明書・品質保証書・保護カバー・収納ケースなど
B 商品や製品と一体として販売される容器包装用の物品などである。
「原材料」とは,
目的物たる物品を作り出すための基になる資材(原料・材料)をいう。
「これらの製造に用いる金型」とは,
「物品若しくはその半製品,部品,附属品若しくは原材料」の製造を行うために使用する当該物品等の形状をかたどった金属製の物品をいう。なお,金型の製造を委託した親事業者が,それを用いて自ら物品等の製造を行う場合に限らず,更に別の事業者に対しその金型を用いて製造するよう委託する場合の金型も含む。
  規格品・標準品を購入することは,原則として製造委託の対象とはならないが,本法の規定では,親事業者が下請事業者に委託する取引を対象としているので,規格品・標準品であっても,その一部でも自社向けの加工などをさせた場合には対象となり,さらにカタログ品等でも汎用性が低く,下請事業者が親事業者の委託を受けてから製造することが前提となっているような場合には,「製造委託」に該当する。
また,製造設備を持たず,製造をしていない事業者が,その販売する物品についての製造を他の事業者に依頼することも「製造委託」に該当する。例えば,製造問屋と呼ばれる卸売業者が製造を依頼すること,大規模小売店等が自社のプライベートブランド商品の製造を依頼することは「製造委託」に該当する。
製造委託は次の4つの類型
(類型1) 物品の販売を行っている事業者が,その物品の製造を他の事業者に委託する場合。
例えば,製品,中間製品,特注材料等の製造・加工外注,製造工程中の検査・運搬等の作業外注などがこれに当たる。なお,販売する物品の部品等の製造に必要な金型もこれに当たる。
また,販売する物品の附属品(取扱説明書・保証書,容器,包装材料,ラベルなど)の製造を委託する場合もこの類型に含まれる。
事業者が「物品の販売」を行っている場合に,その物品(その半製品,部品,附属品,原材料及びこれらの製造に用いる金型を含む。)の製造(加工を含む。)を委託する場合で,組立外注(製品組立,完成品組立など),加工外注(機械加工,プレス・板金・製缶加工など),部品外注(ねじ,スプリングなど),金型外注などが含まれる。
(類型2) 物品の製造を請け負っている事業者が,その物品の製造を他の事業者に委託する場合。
例えば,ある種の製品について受注生産しているもので,その生産の全部又は一部を他の事業者に委託する場合がこれに当たる。
  事業者が「物品の製造(加工を含む。)」を請け負っている場合に,その物品(その半製品,部品,附属品,原材料及びこれらの製造に用いる金型を含む。)の製造(加工を含む。)を委託する場合をいう。
建築物など不動産の工事請負は,「物品」の製造ではないので,本法の適用の対象とはならない。
(類型3) 物品の修理を行っている事業者が,その物品の修理に必要な部品又は原材料の製造を他の事業者に委託する場合。
例えば,自社で修理している機械の修理に必要な特殊部品の製造又は加工を他の事業者に委託する場合がこれに当たる。
(類型4) 自家使用又は自家消費する物品を社内で製造している事業者が,その物品の製造を他の事業者に委託する場合。
例えば,自社の工場で使用する工具又は設備・機械類を自家製造している場合,そのもの又は一部の製造を他の事業者に委託する場合がこれに当たる。
  事業者が,「その使用し又は消費する物品の製造」を業として行う場合,つまり,外部への販売を目的にするのではなく,自家使用又は自家消費する物品の製造を,社会通念上事業の遂行とみることができる程度に反復継続的に行っている場合に,その物品(その半製品,部品,附属品,原材料及びこれらの製造に用いる金型を含む。)の製造(加工を含む。)を他の事業者に委託する場合をいう。単に製造する能力が潜在的にあるにすぎない場合は「業として」行っていることとはならない。
典型的なケースとしては,自家使用又は自家消費する工具・専用機械,製品の運送に使用する包装・梱包用物品などについて自家製造している場合に,当該工具,機械,物品又はその部品等を他の事業者に製造委託することが挙げられる。
なお,発注する事業所では自家製造していなくても,他の事業所で当該物品を自家製造していれば「業として」行っていることとなる。
ウ 修理委託(第2条第2項)
第2条(定義)
2 この法律で「修理委託」とは,事業者が業として請け負う物品の修理の行為の全部又は一部を他の事業者に委託すること及び事業者がその使用する物品の修理を業として行う場合にその修理の行為の一部を他の事業者に委託することをいう。
「修理委託」とは,
物品の修理を業として請け負う事業者が,その修理の行為の全部又は一部を他の事業者に委託すること及び事業者がその使用する物品を自家修理している場合に,その修理の行為の一部を他の事業者に依頼することをいう。
「請け負う物品の修理」には,
事業者が販売する物品について保証期間中にユーザーに対して行う修理も含まれる。
物品の「修理委託」は次の2つの類型に分けられている。なお,家屋などの不動産が物品に含まれないのは,製造委託の場合と同じである。
(類型1) 物品の修理を業として請け負っている事業者が,その修理行為の全部又は一部を他の事業者に委託する場合。
例えば,自動車修理業者が請け負った自動車の修理を他の事業者に委託する場合がこれに当たる。
(類型2) 自家使用する物品を自家修理している事業者が,その物品の修理行為の一部を他の事業者に委託する場合。
例えば,自社の工場で使用している機械類や,設備機械に付属する配線・配管などの修理を社内でも行っている場合であって,その修理の一部を他の事業者に委託する場合がこれに当たる。
  類型2は,事業者が,「その使用する物品の修理」を業として行う場合,つまり,他から請け負うのではなく,自家使用する物品の修理を反復継続的に社会通念上,事業の遂行とみることができる程度に行っている場合に,その物品の修理の一部を他の事業者に委託する場合をいう。単に修理する能力が潜在的にあるにすぎない場合は「業として」行っているとは認められない。
(注)実際の修理委託においては,下請事業者が発注元に出向いて修理することがある。このような場合は物品を納入する行為は発生しないが,納入されないからといって修理委託に該当しなくなるわけではないので注意が必要である。
エ 情報成果物作成委託(第2条第3項)
第2条(定義)
3 この法律で「情報成果物作成委託」とは,事業者が業として行う提供若しくは業として請け負う作成の目的たる情報成果物の作成の行為の全部又は一部を他の事業者に委託すること及び事業者がその使用する情報成果物の作成を業として行う場合にその情報成果物の作成の行為の全部又は一部を他の事業者に委託することをいう。
「情報成果物」とは,次に掲げるものをいう。
@ プログラム(電子計算機に対する指令であって,一の結果を得ることができるように組み合わされたもの)
例:テレビゲームソフト,会計ソフト,家電製品の制御プログラム,顧客管理システム
A 映画,放送番組その他影像又は音声その他の音響により構成されるもの
例:テレビ番組,テレビCM,ラジオ番組,映画,アニメーション
B 文字,図形若しくは記号若しくはこれらの結合又はこれらと色彩との結合により構成されるもの
例:設計図,ポスターのデザイン,商品・容器のデザイン,コンサルティングレポート,雑誌広告
「情報成果物作成委託」は,次の3つの類型に分けられる。
(類型1) 情報成果物を業として提供している事業者が,その情報成果物の作成の行為の全部又は一部を他の事業者に委託する場合。
「提供」とは,
事業者が,他者に対し情報成果物の販売,使用許諾を行うなどの方法により,当該情報成果物を他者の用に供することをいう。この提供には,物品等の付属品(例:家電製品の取扱説明書の内容,CDのライナーノーツ)として提供される場合,制御プログラムとして物品に内蔵される(例:家電製品の制御プログラム)場合,商品の形態,容器,包装等に使用するデザインや商品の設計などを商品に化体して提供する場合(例:ペットボトルの形のデザイン,半導体の設計図)も含まれる。
「情報成果物の作成の行為の全部又は一部を他の事業者に委託すること」とは,
情報成果物の作成のうち,@情報成果物それ自体の作成,A当該情報成果物を構成することとなる情報成果物の作成を,他の事業者に委託することをいう。
情報成果物の提供が,純粋に無償の場合(例:広告宣伝物,リクルートビデオ)には「業として行う提供」には当たらず,類型1には該当しないが,この場合であっても類型3には該当する可能性がある。
(類型1に該当する例)
○ ソフトウェア開発業者が,消費者に販売するゲームソフトの作成を他のソフトウェア開発業者に委託すること。
○ ソフトウェア開発業者が,ユーザーに提供する汎用アプリケーションソフトの一部の開発を他のソフトウェア開発業者に委託すること。
○ 放送事業者が,放送するテレビ番組の制作を番組制作業者に委託すること。
○ 家電製品製造業者が,消費者に販売する家電製品に内蔵する制御プログラムの開発をソフトウェア開発業者に委託すること。
○ 家電製品製造業者が,消費者に販売する家電製品の取扱説明書の内容の作成を他の事業者に委託すること。
○ 衣料品製造業者が,消費者に販売する衣料品のデザインの作成を他の事業者に委託すること。
○ 不動産会社が,販売用住宅の建設に当たり,当該住宅の建設設計図の作成を設計会社に委託すること。
(類型2) 情報成果物の作成を業として請け負っている事業者が,その情報成果物の作成の行為の全部又は一部を他の事業者に委託する場合。
(類型2に該当する例)
○ 広告会社が,広告主から制作を請け負うテレビCMの制作を広告制作業者に委託すること。
○ ソフトウェア開発業者が,ユーザーから開発を請け負うソフトウェアの一部の開発を他のソフトウェア開発業者に委託すること。
○ 広告会社が,作成を請け負うポスターデザインの一部の作成をデザイン業者に委託すること。
○ テレビ番組制作業者が,制作を請け負うテレビ番組のBGM等の音響データの制作を他の音響制作業者に委託すること。
○ テレビ番組制作業者が,制作を請け負うテレビ番組に係る脚本の作成を脚本家に委託すること。
○ 建築設計業者が,施主から作成を請け負う建築設計図面の作成を他の建築設計業者に委託すること。
○ 工作機械製造業者が,ユーザーから製造を請け負う工作機械に内蔵するプログラムの開発をソフトウェア開発業者に委託すること。
  なお,情報成果物の作成においては,情報成果物の作成に必要な役務の提供の行為を他の事業者に委託する場合がある。この場合,当該役務は委託事業者が専ら自ら用いる役務であり,他者の用に供する役務と異なるので,本法第2条第4項の「役務提供委託」には該当しない。
最終的な情報成果物 最終的な情報成果物を構成することとなる情報成果物(例) 最終的な情報成果物の作成に必要な役務(例)
(当該情報成果物の作成を委託することは,本法の対象) (当該役務の提供を他者に委託することは,本法の対象とならない)
ゲームソフト ・プログラム
・映像データ
・BGM等の音響データ
・シナリオ
・キャラクターデザイン
・監修(情報成果物の作成を伴わないもの)
放送番組 ・コーナー番組 ・番組のタイトルCG
・BGM等の音響データ
・脚本
・オリジナルテーマ曲の楽譜
・監督
・AD
・俳優
・照明
・撮影 (撮影したデータを納める場合は「情報成果物を構成することとなる情報成果物(いわば部品,半製品)」に該当)
アニメーション ・セル画,背景美術等
・BGM等の音響データ
・脚本
・絵コンテ
・キャラクターデザイン
・オリジナルテーマ曲の楽譜
・監督
・声優
(類型3) 自らが使用する情報成果物の作成を業として行っている場合に,その作成の行為の全部又は一部を他の事業者に委託する場合。
「事業者がその使用する情報成果物の作成を業として行っている場合」とは,
事業者が,自らの事業のために用いる情報成果物(例:広告宣伝物,社内で使用する会計用ソフトウェア,自社のホームページ)の作成を反復継続的に社会通念上,事業の遂行とみることができる程度に行っている場合をいう。例えば,社内にシステム部門があっても,他の事業者に作成を委託しているソフトウェアと同種のソフトウェアを自社のシステム部門においては作成していない場合など,単に作成する能力が潜在的にあるにすぎない場合は「業として」行っているとは認められない。
(類型3に該当する例)
○ 事務用ソフトウェア開発業者が,自社で使用する会計用ソフトウェアの一部の開発を他のソフトウェア開発業者に委託すること。
○ 自らデザインを作成している広告会社が,新製品のデザインコンペ(試作競技)に参加するに当たり,デザインの作成をデザイン業者に委託すること。
オ 役務提供委託(第2条第4項)
第2条(定義)
4 この法律で「役務提供委託」とは,事業者が業として行う提供の目的たる役務の提供の行為の全部又は一部を他の事業者に委託することをいう。 ※ ただし,建設業(建設業法(昭和二十四年法律第百号)第二条第二項に規定する建設業をいう。)を営む者が,業として請け負った建設工事の全部又は一部を他の建設業を営む者に請け負わせる場合は本法の対象とはならない。
(類型) 役務の提供を業として行っている事業者が,その提供の行為の全部又は一部を他の事業者に委託する場合。
「(業として行う)提供の目的たる役務」とは,
委託事業者が他者に提供する役務のことであり,委託事業者が自ら利用する役務は含まれない(自ら利用する役務について他の事業者に委託することは,下請法上の「役務提供委託」には該当しない。)。他の事業者に役務の提供を委託する場合に,その役務が他者に提供する役務であるか,又は自ら用いる役務であるかは,取引当事者間の契約や取引慣行に基づき判断されることとなる。例えば,荷主から貨物運送の委託に併せて請け負った梱包作業の委託を再委託に出す場合は,当該梱包作業は他者(荷主)に提供する役務であるから,当該梱包作業の再委託は「役務提供委託」に該当し,本法の対象となる。逆に,荷主から梱包作業の委託は請け負っていないが,自らの運送作業に必要である梱包作業を他の事業者に委託に出す場合は,当該梱包作業は自ら用いる役務であるから,当該梱包作業の委託は「役務提供委託」に該当せず,本法の対象とはならない。
他者に提供する役務が,純粋に無償の場合であれば本法の対象とならないが,その役務が他者に販売する物品の一部として提供される場合(例:家電メーカーが販売するソフトウェアに付随して提供するサポートサービス)には対象となる。
なお,本法では,建設業法に規定される建設業を営む者が業として請け負う建設工事は対象とならない。これは,建設工事の下請負については,建設業法において本法と類似の規定が置かれており,下請事業者の保護が別途図られているためである。
(役務提供委託に該当する例)
○ 貨物利用運送事業者が,請け負った貨物運送のうちの一部を他の運送事業者に委託すること。
○ 貨物自動車運送業者が,貨物運送に併せて請け負った梱包を梱包業者に委託すること。
○ 内航運送業者が,請け負う貨物運送に必要な船舶の運航を他の内航運送業者又は船舶貸渡業者に委託すること。
○ ビルメンテナンス業者が,請け負うメンテナンスの一部たるビルの清掃を清掃業者に委託すること。
○ 広告会社が,広告主から請け負った商品の総合的な販売促進業務の一部の行為である商品の店頭配布をイベント会社に委託すること。
○ ビル管理会社が,ビルオーナーから請け負うビルメンテナンス業務をビルメンテナンス業者に委託すること。
○ 警備会社が,委託を受けた警備業務の一部を他の警備会社に委託すること。
○ ソフトウェアを販売する事業者が,当該ソフトウェアの顧客サポートサービスを他の事業者に委託すること。
(自ら用いる役務の委託に該当し,役務提供委託に該当しない例)
○ ホテル業者が,ベッドメイキングをリネンサプライ業者に委託すること。
○ 工作機械製造業者が,自社工場の清掃作業の一部を清掃業者に委託すること。
○ 鉄鋼製造業者が,顧客渡しの条件で販売した鉄鋼を販売先に運送する作業を運送事業者に委託すること。
○ カルチャーセンターを営む事業者が,開催する教養講座の講義を個人事業者である講師に委託すること。
○ プロダクションが,自社で主催するコンサートの歌唱を個人事業者である歌手に委託すること。
カ トンネル会社の規制(第2条第9項)
  「直接下請事業者に委託をすれば本法の対象となる場合に,資本金が3億円(又は5千万円)以下の子会社(いわゆるトンネル会社)等を設立し,この子会社が発注者となって委託を行い,本法の規制を免れる」というような脱法的行為を封ずるために,次に掲げる2つの要件を共に充足しているときは,その子会社等が親事業者とみなされ,本法が適用される。
(ア) 親会社から役員の任免,業務の執行又は存立について支配を受けている場合(例えば,親会社の議決権が過半数の場合,常勤役員の過半数が親会社の関係者である場合又は実質的に役員の任免が親会社に支配されている場合。)。
(イ) 親会社からの下請取引の全部又は相当部分について再委託する場合(例えば,親会社から受けた委託の額又は量の50%以上を再委託している場合。)。
※ これらの下請取引においては,資本金が3億円以下であっても子会社が親事業者とみなされ,本法の適用を受ける。
ア 書面の交付義務(第3条)
(ア) 原則的な書面交付の方法
親事業者は,発注に際して下記の具体的記載事項をすべて記載している書面(3条書面)を直ちに下請事業者に交付する義務がある。
● この規定が設けられたねらい
下請取引において口頭による発注は発注内容・支払条件が不明確でトラブルが生じやすく,トラブルが生じた場合,下請事業者が不利益を受けることが多いので,親事業者から発注内容を明確に記載した書面を発注の都度下請事業者に交付させ,下請取引に係るトラブルを未然に防止するとともに,親事業者が自主的に本法を遵守することを期待し,下請取引の公正化を図るためである。
● 書面交付は発注の都度必要
書面の交付は,原則として発注の都度必要であるが,下請取引は継続的に行われることが多いため,取引条件について基本的事項(例えば支払方法,検査期間等)が一定している場合には,これらの事項に関してはあらかじめ書面により通知することで,個々の発注に際して交付する書面への記載が不要となる。この場合には,3条書面に「下請代金の支払方法等については現行の『支払方法等について』によるものである」ことなどを付記しなければならない。 なお,通知した書面については,新たな通知が行われるまでの間は有効とすることができる。この場合,通知書面には,新たな通知が行われるまでの間は有効である旨明記する必要があり,また,親事業者においては,年に1回,社内の購買・外注担当者に対し,通知した書面に記載されている内容について周知徹底を図ることが望ましい。
● 具体的記載事項
@ 親事業者及び下請事業者の名称(番号,記号等による記載も可)
A 製造委託,修理委託,情報成果物作成委託又は役務提供委託をした日
B 下請事業者の給付の内容
C 下請事業者の給付を受領する期日(役務提供委託の場合は,役務が提供される期日又は期間)
D 下請事業者の給付を受領する場所
E 下請事業者の給付の内容について検査をする場合は,その検査を完了する期日
F 下請代金の額(算定方法による記載も可)
G 下請代金の支払期日
H 手形を交付する場合は,その手形の金額(支払比率でも可)と手形の満期
I 一括決済方式で支払う場合は,金融機関名,貸付け又は支払可能額,親事業者が下請代金債権相当額又は下請代金債務相当額を金融機関へ支払う期日
J 原材料等を有償支給する場合は,その品名,数量,対価,引渡しの期日,決済期日,決済方法
● 下請事業者の給付の内容の記載
3条書面に記載する「下請事業者の給付の内容」とは,親事業者が下請事業者に委託する行為が遂行された結果,下請事業者から提供されるべき物品及び情報成果物の品目,品種,数量,規格,仕様等,又は役務提供委託においては役務の内容である。3条書面を交付するに当たっては,下請事業者が作成・提供する委託の内容が分かるよう,これらを明確に記載する必要がある。
また,主に,情報成果物の作成委託に係る作成過程を通じて,委託した情報成果物に関し,下請事業者の知的財産権が発生する場合がある。この場合において,親事業者が,情報成果物を提供させるとともに,作成の目的たる使用の範囲(例:放送番組の作成委託における一次的放送権の許諾)を超えて,当該知的財産権を自らに譲渡・許諾させることを含んで発注する場合には,親事業者は,3条書面に記載する「下請事業者の給付の内容」として,下請事業者が作成した情報成果物を提供させるとともに知的財産権を譲渡・許諾させること(部分的に譲渡・許諾させる場合には,その範囲,期間等)を明確に記載する必要がある。
● 算定方法による下請代金の額の記載
3条書面には,下請代金の額として正式単価を具体的な金額で記載しなければならない。具体的な金額を記載することが困難なやむを得ない事情がある場合(例えば,プログラム作成委託であって従事した技術者の技術水準ごとの作業時間に応じて代金が支払われる場合,一定期間を定めた役務提供委託であって当該期間に提供した役務の種類及び量に応じて代金が支払われる場合等。)であっても,算定方法を記載できる場合には,下請代金の額として算定方法を記載することが認められる。
ただし,算定方法は,下請代金の具体的な金額を自動的に確定するものでなければならず,算定方法を定めた書面と3条書面が別のものである場合においては,これらの書面の関連付けを明らかにしておく必要がある。また,下請代金の具体的な金額を確定した後,速やかに下請事業者へ書面にて交付しておく必要がある(算定の根拠となる数値についても記載することが望ましい。ただし,3条書面の形での再発行は要さない。)。
● 電子受発注
前記「● 具体的記載事項」の項目を書面に代えて,下請事業者の承諾を得て,電子メール等の方法で提供することができる。
(イ) 例外的な書面の交付方法
3条書面の具体的記載事項のうち,その内容が定められないことにつき正当な理由がある事項がある場合は,当該事項を記載せずに下請事業者に書面を交付することが認められる。ただし,記載しなかった事項の内容が定められた後直ちに,当該事項を記載した書面を交付する義務がある。
● 当初書面の交付方法
3条書面の具体的記載事項のうち「その内容が定められないことにつき正当な理由がある」事項がある場合には,当該事項を記載せずに,それ以外の事項を記載した書面(当初書面)を交付することが認められる。この場合には,記載しなかった事項について,内容が定められない理由及び内容を定めることとなる予定期日を当初書面に記載しなければならない。
※ 当初書面に記載する「理由」には,内容が定められない理由を簡潔に記載すればよく,例えば「ユーザーの詳細仕様が未確定であるため」といった記載が考えられる。「予定期日」には,内容を定めることとなる具体的な日付が分かるように記載する必要があり,例えば「○年○月○日」「発注後○日」といった記載が考えられる。
● 「正当な理由」とは
「正当な理由」とは,取引の性質上,委託した時点では具体的記載事項の内容を定めることができないと客観的に認められる理由であり,例えば,以下のような場合には「正当な理由がある」と認められる。一方,例えば,ユーザーとの取引価格が決定していないなど具体的記載事項の内容について決定できるにもかかわらず決定しない場合や,下請代金の額として「算定方法」を記載することが可能である場合には「正当な理由がある」とはいえない。
[正当な理由があると認められる例]
○ ソフトウェア作成委託において最終ユーザーが求める仕様が確定しておらず,正確な委託内容を決定することができない場合。
○ 広告制作物の作成委託において制作物の具体的な内容が確定していない場合。
○ 放送番組の作成委託において番組の具体的な内容が確定していない場合。
○ 製造委託において,親事業者はその基本性能等の概要仕様のみを示して委託を行い,下請事業者が持つ技術により詳細設計を行って具体的な仕様を決定していく場合。
● 補充書面の交付方法
当初書面に記載されていない事項について,その内容が確定した後には,直ちに,当該事項を記載した書面(補充書面)を交付する必要があり,遅くても納入日までには交付しなければならない。また,これらの書面については相互の関連性が明らかになるようにする必要がある。
※ 当初書面と補充書面の注文番号を同じとしたり,補充書面上に「本文書は○年○月○日付けの○○文書の補充書面である。」と記載したりする等,当初書面の内容を補充する書面であることが分かればよく,書式・内容は問わない。
● 仮単価による発注
下請代金の額として単価を決められないことについて正当な理由がある場合には,その単価を記載せずに当初書面を交付することが認められていることから,そのような正当な理由があれば,正式な単価でないことを明示した上で,具体的な仮単価を記載したり「0円」と表記すること等についても認められる。しかし,このような場合であっても,下請代金の額等が定められない理由及びそれを定めることとなる予定期日を当初書面に記載しなければならない。また,単価が確定した後には,直ちに,正式単価を記載した補充書面を交付しなければならない。
イ 支払期日を定める義務(第2条の2)
親事業者は,下請事業者との合意の下に,親事業者が下請事業者の給付の内容について検査をするかどうかを問わず,下請代金の支払期日を物品等を受領した日(役務提供委託の場合は,下請事業者が役務の提供をした日。)から起算して60日以内でできる限り短い期間内で定める義務がある。
● この規定が設けられたねらい
下請取引の性格から,親事業者が下請代金の支払期日を不当に遅く設定するおそれがあり,下請事業者の利益を保護する必要からこの規定が設けられた。
● 本法上の下請代金の支払期日は次のとおり
(ア) 当事者間の取決めにより,下請事業者の物品等を受領した日(役務提供委託の場合は,下請事業者が役務の提供をした日。)から起算して60日以内に支払期日を定めた場合は,その定められた支払期日。
(イ) 当事者間で支払期日を定めなかったときは,物品等を受領した日。
(ウ) 当事者間で合意された取決めがあっても,物品等を受領した日から起算して60日を超えて定めたときは,受領した日から起算して60日を経過した日の前日。
ウ 書類の作成・保存義務(第5条)
  親事業者は,下請事業者に対し製造委託,修理委託,情報成果物作成委託又は役務提供委託をした場合は給付の内容,下請代金の額等について記載した書類(5条書類)を作成し2年間保存する義務がある。
● この規定が設けられたねらい
親事業者が,下請取引の内容について記載した書類を作成し保存することによって,下請取引に係るトラブルを未然に防止するとともに,行政機関の検査の迅速さ,正確さを確保するためである。
● 具体的記載事項
@ 下請事業者の名称(番号,記号等による記載も可)
A 製造委託,修理委託,情報成果物作成委託又は役務提供委託をした日
B 下請事業者の給付の内容
C 下請事業者の給付を受領する期日(役務提供委託の場合は,役務が提供される期日・期間)
D 下請事業者から受領した給付の内容及びその給付を受領した日(役務提供委託の場合は,役務が提供された日・期間)
E 下請事業者の給付の内容について検査をした場合は,その検査を完了した日,検査の結果及び検査に合格しなかった給付の取扱い
F 下請事業者の給付の内容について,変更又はやり直しをさせた場合は,その内容及び理由
G 下請代金の額(算定方法による記載も可)
H 下請代金の支払期日
I 下請代金の額に変更があった場合は,増減額及びその理由
J 支払った下請代金の額,支払った日及び支払手段
K 下請代金の支払につき手形を交付した場合は,手形の金額,手形を交付した日及び手形の満期
L 一括決済方式で支払うこととした場合は,金融機関から貸付け又は支払を受けることができることとした額及び期間の始期並びに親事業者が下請代金債権相当額又は下請代金債務相当額を金融機関へ支払った日
M 原材料等を有償支給した場合は,その品名,数量,対価,引渡しの日,決済をした日及び決済方法
N 下請代金の一部を支払い又は原材料等の対価を控除した場合は,その後の下請代金の残額
O 遅延利息を支払った場合は,遅延利息の額及び遅延利息を支払った日
※ 下請代金の額として算定方法を記載した場合には,その後定まった下請代金の額及びその定まった日を記載しなければならない。また,その算定方法に変更があった場合,変更後の算定方法,その変更後の算定方法により定まった下請代金の額及び変更した理由を記載しなければならない。
● 電磁的記録の作成・保存
以上の項目を記録した電磁的記録を作成し,保存することが認められている。
エ 遅延利息の支払義務(第4条の2)
  親事業者は,下請代金をその支払期日までに支払わなかったときは,下請事業者に対し,物品等を受領した日(役務提供委託の場合は,下請事業者が役務の提供をした日)から起算して60日を経過した日から実際に支払をする日までの期間について,その日数に応じ当該未払金額に年率14.6%を乗じた額の遅延利息を支払う義務がある。
● この規定が設けられたねらい
下請取引の性格から,親事業者と下請事業者との間で自主的に遅延利息を約定することが困難であるとみられたので,下請事業者の利益を保護する必要からこの規定が設けられた。
支払遅延は法に違反する行為であり,遅延利息の支払は原状を回復するための救済措置である。遅延利息を支払えば下請代金の支払を遅らせてよいという趣旨ではない。
なお,遅延利息の年率14.6%は公正取引委員会規則で定められている。
ア 買いたたきの禁止(第4条第1項第5号)
  親事業者が発注に際して下請代金の額を決定するときに,発注した内容と同種又は類似の給付の内容(又は役務の提供)に対して通常支払われる対価に比べて著しく低い額を不当に定めることは「買いたたき」として本法違反になる。
● この規定が設けられたねらい
親事業者が下請事業者と下請代金の額を決定する際に,その地位を利用して,限度を超えた低価格を下請事業者に押し付けることは,下請事業者の利益を損ない,経営を圧迫することになるのでこれを防止するためである。
(注)「下請代金の減額」との区別 「買いたたき」は,親事業者が下請事業者に発注する時点で生ずるものであるのに対し,「下請代金の減額」は,いったん決定された下請代金の額を事後に減じるものである。
● 「通常支払われる対価」とは
(ア) 同種又は類似の給付の内容(又は役務の提供)について実際に行われている取引の価格(すなわち,市価のこと)をいう。
(イ) 市価の把握が困難な場合は,それと同種又は類似の給付の内容(又は役務の提供)の従来からの取引価格をいう。
● 買いたたきに該当するか否かは,次のような要素を勘案して総合的に判断される。
(ア) 下請代金の額の決定に当たり,下請事業者と十分な協議が行われたかどうかなど対価の決定方法。
(イ) 差別的であるかどうかなど対価の決定内容。
(ウ) 「通常支払われる対価」と当該給付に支払われる対価との乖離状況。
(エ) 当該給付に必要な原材料等の価格動向。
● 次のような方法で下請代金の額を定めることは,買いたたきに該当するおそれがある。
(ア) 多量の発注をすることを前提として下請事業者に単価の見積りをさせ,その見積単価を少量の発注しかしない場合の単価として下請代金の額を定めること。
(イ) 下請事業者に見積もりをさせた段階より発注内容が増えたのにもかかわらず,下請代金の額の見直しをせず,当初の見積価格を下請代金の額として定めること。
(ウ) 一律に一定比率で単価を引き下げて下請代金の額を定めること。
(エ) 親事業者の予算単価のみを基準として,一方的に通常支払われる対価より低い単価で下請代金の額を定めること。
(オ) 合理的な理由がないにもかかわらず,特定の下請事業者を差別して取り扱い,他の下請事業者より低い下請代金の額を定めること。
(カ) 同種の給付について,特定の地域又は顧客向けであることを理由に,通常支払われる対価より低い単価で下請代金の額を定めること。
(キ) 情報成果物作成委託において給付の内容に知的財産権が含まれている場合,当該知的財産権の対価について,下請事業者と協議することなく,一方的に通常支払われる対価より低い額を定めること。
イ 受領拒否の禁止(第4条第1項第1号)
  親事業者が下請事業者に対して委託した給付の目的物について,下請事業者が納入してきた場合,親事業者は下請事業者に責任がないのに受領を拒むと本法違反となる。
● この規定が設けられたねらい
親事業者が下請事業者に対して委託するものは,親事業者の仕様等に基づいた特殊なものが多く,親事業者に受領を拒否されると他社への転売が不可能であり,下請事業者の利益が著しく損なわれるので,これを防止するためである。
● 受領拒否とは
指定した納期に下請事業者が納入する給付の目的物の受取を拒んだときは受領拒否となる。
また,次の行為も原則として受領拒否に含まれる。
(ア) 発注の取消し(契約の解除)をして,給付の目的物を受領しないこと(発注の取消しは「不当な給付内容の変更」にも該当する。)。
(イ) 納期を延期して,給付の目的物を受領しないこと。
(ウ) 発注後に,恣意的に検査基準を変更し,従来の検査基準で合格とされたものを不合格とすること。
(エ) 取引の過程において,注文内容について下請事業者が提案し,確認を求めたところ,親事業者が了承したので,下請事業者がその内容のとおりに作成したにもかかわらず,注文と異なるとすること。
● 下請事業者の責に帰すべき理由
「下請事業者の責に帰すべき理由」があるとして,受領を拒否することができるのは,次の場合に限定される。
(ア) 注文と異なるもの又は給付に瑕疵等があるものが納入された場合。
(イ) 指定した納期までに納入されなかったため,そのものが不要になった場合(ただし,無理な納期を指定している場合などは除かれる。)。
● 受領とは
下請事業者が納入したものを検査の有無にかかわらず受け取るという行為を指しており,下請事業者の納入物品等を親事業者が事実上支配下におけば受領したことになる。親事業者の検査員が下請事業者の工場へ出張し検査を行うような場合には,検査員が出張して検査を開始した日が受領日となる。
情報成果物の作成委託においては,給付の目的物として作成された情報成果物を記録した媒体(例:CD‐ROM)を自己の占有下に置くこと,又は情報成果物を記録した媒体がない場合には当該情報成果物を自己の支配下に置くこと(例えば,親事業者のハードディスクに記録されること)が給付の受領となる。
ウ 返品の禁止(第4条第1項第4号)
  親事業者は下請事業者から納入された物品等を受領した後に,その物品等に瑕疵があるなど明らかに下請事業者に責任がある場合において,受領後速やかに不良品を返品するのは問題ないが,それ以外の場合に受領後に返品すると本法違反となる。
● この規定が設けられたねらい
基本的には受領拒否の禁止規定と同じねらいであり,納入した物品等を返品されることは,受領拒否の場合と同様に下請事業者の利益が著しく損なわれるのでこれを防止するためである。
● 下請事業者の責に帰すべき理由
検査の結果,「下請事業者の責に帰すべき理由」があるとして返品することができるのは,次の場合に限られる。
(ア) 注文と異なる物品等が納入された場合
(イ) 汚損・き損等された物品等が納入された場合
なお,親事業者が,発注後に恣意的に検査基準を変更し,従来の検査基準では合格とされた物品を不合格とした場合の返品は認められない。
● 返品することのできる期間
(ア) 直ちに発見できる瑕疵の場合
通常の検査で直ちに発見できる瑕疵の場合,発見次第速やかに返品する必要がある。
親事業者は,全数検査を行う場合,受領後検査に要する標準的な期間内で不合格品(不良品)を速やかに返品することは認められるが,親事業者が意図的に検査期間を延ばし,その後に返品することは認められない。
また,親事業者は,ロット単位で抜取検査を行う場合,合格としたロットの中の不良品について返品することは認められない。ただし,@継続的な下請取引が行われている場合において,A発注前にあらかじめ,直ちに発見できる不良品について返品を認めることが合意・書面化されている場合であって,B当該書面と3条書面との関連付けがなされているときに,C遅くとも,物品を受領後,当該受領に係る最初の支払時までに返品する場合には,これを返品することが認められる。この場合,親事業者と下請事業者との間では,合格ロット内の不良品を返品することを前提に下請代金の額について十分な協議が行われる必要があり,これに反し,親事業者が一方的に従来と同様の単価を設定する場合は買いたたき(本法第4条第1項第5号違反)に該当するおそれがある。また,検査を行わないで返品したり,物品を受領後,当該受領に係る最初の下請代金の支払時を超えて返品することは,違法な返品として本法違反となるので注意する必要がある。
(イ) 直ちに発見できない瑕疵の場合
通常の検査で発見できない瑕疵で,ある程度期間が経過した後に発見された瑕疵については,その瑕疵が下請事業者に責任があるものである場合は,当該物品等の受領後6か月以内の返品は問題ないが,6か月を超えた後に返品すると本法違反となる。
ただし,一般消費者に対して6か月を超えて品質保証期間を定めている場合には,その保証期間に応じて最長1年以内であれば親事業者は下請事業者に返品することができる。
● 「返品の禁止」と本法第4条第2項第4号(不当なやり直し)との関係
受領した物品等を返して,再び受け取らないことが「返品」に該当する。受領した物品等を一旦下請事業者に返していても,それを修補させて再納入させたり,良品に交換させたりすることは「やり直し」に該当する。
● 検査方法と返品期間の関係
※ @継続的な下請取引が行われている場合で,A発注前にあらかじめ,直ちに発見できる不良品について返品を認めることが合意・書面化されている場合であって,B当該書面と3条書面との関連付けがなされているときに,C遅くとも,物品を受領後,当該受領に係る最初の支払時までに返品する場合
エ 下請代金の減額の禁止(第4条第1項第3号)
  親事業者は発注時に決定した下請代金を「下請事業者の責に帰すべき理由」がないにもかかわらず発注後に減額すると本法違反となる。
減額の名目,方法,金額の多少を問わず,また発注後いつの時点で減額しても本法違反となる。
● この規定が設けられたねらい
決定された契約内容を契約どおり実行することは取引の基本である。下請取引の場合でも,下請代金の額が決定され,契約した後に減額が行われると直接的に下請事業者の利益を損なうことになるので,これを防止するためである。
● 減額の考え方
下請代金の減額の禁止とは,親事業者が,下請事業者の責に帰すべき理由がないのに,定められた下請代金の額を減ずることを禁止するものであり,減額の名目,方法,金額の多少を問わず,また発注後いつの時点で減額しても本法違反となる。つまり,歩引き,リベート,システム利用料など当初に下請事業者と協議して合意した金額であったとしても,その内容が下請事業者の責任のない理由により下請代金から減じるものであれば減額として問題となり得ることに注意する必要がある(ボリュームディスカウントの項を参照)。
● 下請代金
本法では,「下請代金」とは,親事業者が製造委託,修理委託,情報成果物作成委託又は役務提供委託をした場合に「下請事業者の給付(役務提供委託をした場合には役務の提供。)に対し支払うべき代金をいう」と規定している。下請代金には,消費税・地方消費税額も含まれる。
● 下請事業者の責に帰すべき理由
「下請事業者の責に帰すべき理由」があるとして,下請代金の額を減じることができるのは,具体的には,次の場合に限定される。
(ア) 下請事業者の責任に帰すべき理由(瑕疵の存在,納期遅れ等。)があるとして,受領拒否,返品した場合に,その給付に係る下請代金の額を減じるとき。
(イ) 下請事業者の責任に帰すべき理由があるとして,受領拒否,返品できるのに,そうしないで,親事業者自ら手直しをした場合に,手直しに要した費用を減じるとき。
(ウ) 瑕疵等の存在又は納期遅れによる商品価値の低下が明らかな場合に,客観的に相当と認められる額を減じるとき。
  なお,下請事業者の責任に帰すべき理由があり,下請代金の支払前(受領後60日以内)に返品する場合には,下請代金を支払わなくてもよい。
親事業者の経営が苦しいことを理由として下請代金の減額を行うことが許されないのはもちろんのことであるが,このほかにも,親事業者が下請代金の速やかな支払等を条件として値引きを要求するようなことも,下請代金の減額に当たる。また,下請事業者と下請代金の減額を行うことについてあらかじめ約束ができているというような場合でも,その特約を理由にして下請代金の減額を行うことは許されない。
● ボリュームディスカウント等合理的理由に基づく割戻金
@ボリュームディスカウント等合理的理由に基づく割戻金(例えば,親事業者が,下請事業者に対し,一定期間内に,一定数量を超えた発注を達成した場合に,下請事業者が親事業者に対して支払う割戻金)であって,あらかじめ,A当該割戻金の内容が取引条件として合意・書面化されており,B当該書面における記載と3条書面に記載されている下請代金の額とを合わせて実際の下請代金の額とすることが合意され,かつ,C3条書面と割戻金の内容が記載されている書面との関連付けがなされている場合には下請代金の減額として問題とならない。
現在のところ,合理的な理由に基づく割戻金と認められるものはボリュームディスカウントのみであり,ボリュームディスカウントというためには,ボリュームの設定及び割戻金の設定に合理性が求められることとなる。
ボリュームの設定に当たっては,前記のとおり,「一定期間内に,一定数量を超えた発注を達成」することが必要となるが,これは,ボリュームディスカウントによる割戻金支払の対象となる一定期間(対象期間)における発注予定数量が,実際に発注を行った一定期間(基準期間)における発注数量を上回ることをいい,単に,将来の一定期間における発注予定数量を定め,発注数量の実績がそれを上回ることをいうものではない。
割戻金の設定に当たっては,下請事業者が割戻金を支払うことにより実質的に単価が下がることとなっても,発注数量の増加による単位コストの低減により,下請事業者が対象期間において得る利益が,基準期間における利益を上回ることとなる必要がある。 なお,ボリュームディスカウントは,基本的に特定品目の発注数量の増加とそれに伴う下請事業者のコストの低減を根拠とするものであるから,原則として,一定期間の発注総額の増加のみを理由に割戻金を求めることはボリュームディスカウントには該当しない。
● 違法な下請代金の減額の例
(ア) 下請事業者との間に単価の引下げについて合意が成立し単価改定された場合,その合意前に既に発注されているものにまで新単価を遡及適用して下請代金の額を減ずること。
※〔正しい方法〕
(単価改定日以降の発注分から新単価を適用すること)
(イ) 消費税・地方消費税額相当分を支払わないこと。
(ウ) 下請事業者と合意することなく,下請代金を銀行口座下請代金の額から差し引くこと。
(エ) 親事業者からの作成に必要な材料等の支給の遅れ又は無理な納期指定によって生じた納期遅れ等を下請事業者の責任によるものとして下請代金の額を減ずること。
(オ) 下請代金の支払に際し,端数が生じた場合,端数を1円以上の単位で切り捨てて支払うこと。
(カ) 手形払を下請事業者の希望により一時的に現金払にした場合に,下請代金の額から自社の短期調達金利相当額を超える額を減ずること。
(キ) 親事業者の客先からのキャンセル,市況変化等により不要品となったことを理由に下請代金の額から差し引くこと。
(ク) 販売拡大のために協力してほしいなどの名目をつけて,下請代金の額の何%かを代金から差し引くこと。
オ 下請代金の支払遅延の禁止(第4条第1項第2号)
  親事業者は物品等を受領した日(役務提供委託の場合は,役務が提供された日)から起算して60日以内に定めた支払期日までに下請代金を全額支払わないと本法違反となる。
支払期日は受領日(役務提供委託の場合は,役務が提供された日)を起算日として計算されるので,検査・検収に要する日数にかかわりなく,支払期日を過ぎて未払となっている場合は支払遅延となる。
● この規定が設けられたねらい
納入した物品等(提供した役務)の下請代金を支払期日までに支払ってもらえないと,下請事業者の資金繰りがつかず,従業員への賃金の支払,材料代の支払等が困難になり,最悪の場合は倒産に追い込まれるなど下請事業者の経営の安定が損なわれるので,これを防止するためである。
● 支払遅延
親事業者は,給付を受領した日から60日以内で,かつ,できる限り短い期間内に支払期日を定めなければならず,その定めた支払期日に下請代金を支払わなければならない。「支払期日の経過後なお支払わないこと」は支払遅延として禁止されている。
支払遅延となる行為は,「支払期日」の内容によって次の3つに分けられる。
(ア) 親事業者と下請事業者との間で支払期日が給付の受領日から60日以内に定められている場合は,その定められた支払期日までに支払わないとき。
(イ) 当事者間で支払期日が給付の受領日から60日を超えて定められている場合は,受領日から60日までに支払わないとき(この場合,本法に定める範囲を超えて支払期日が設定されており,それ自体に問題がある。)。
(ウ) 当事者間で支払期日が定められていない場合は,その給付の受領日に支払わないとき。
なお,支払遅延が生じた場合,親事業者は下請事業者に対し,受領後60日を経過した日から支払をする日までの期間について,年率14.6%(109ページ,資料5参照)の遅延利息を支払う義務がある。
● 支払制度
下請代金を毎月の特定日に支払うこととされている場合の具体的支払方法には,納品締切制度と検収締切制度の2通りがある。
下請代金の支払については,上記いずれの支払制度を採用している場合でも,下請事業者の給付の受領後60日以内に支払わなければならないものであるが,継続的な取引の実態としては,例えば,毎月末までの給付の下請代金を翌月末に支払うこと(月末締の翌月末払)となっていることがあるので,本法の運用に当たり,「受領後60日以内」の規定は「受領後2か月以内」として換算している。その運用は,このような1か月締切制度を採っている場合は,締切後30日(1か月)以内に支払わなければならないということである。
なお,検収締切制度においては,検収に相当日数を要する場合があるが,検査をするかどうかを問わず,納品から60日以内において,かつ,できる限り短い期間内に下請代金を支払う必要があるので,支払期日の設定には注意が必要である。
● やり直しをさせた場合の支払期日の起算日
下請事業者の給付に瑕疵があるなど,下請事業者の責任に帰すべき理由があり,下請代金の支払前(受領後60日以内)にやり直しをさせる場合には,やり直しをさせた後の物品等を受領した日が支払期日の起算日となる。
● 情報成果物作成委託における支払期日の起算日(受領日)
情報成果物作成委託では,親事業者が作成の過程で,下請事業者の作成内容の確認や今後の作業の指示等を行うために注文品を一時的に親事業者の支配下に置く場合がある。このとき,@注文品が委託内容の水準に達しているかどうか明らかではない場合であって,Aあらかじめ親事業者と下請事業者との間で,親事業者の支配下に置いた注文品の内容が一定の水準を満たしていることを確認した時点で受領とすることを合意している場合には,当該時点を受領日とし,親事業者の支配下に置いた時点を直ちに受領日とはしない。ただし,3条書面に記載した納期日に親事業者の支配下にあれば,内容の確認が終了しているかどうかにかかわらず,当該納期日を受領日とする。
なお,このような取扱いとしているのは,情報成果物の場合,外形的には全く内容が分からないことから特に認めているものであり,製造委託,修理委託の場合には認められないので注意が必要である。
● 役務提供委託における支払期日の起算日
(ア) 役務提供委託では,原則として,下請事業者が提供する個々の役務が提供された日が支払期日の起算日である。1つの役務が提供されるのに日数を要する場合は,役務提供が終了した日に当該役務が提供されたこととなる。
(イ) しかしながら,役務提供委託においては,一定期間の役務提供を給付の内容とすることがあるので,それが個々の役務が連続して提供される役務の場合には,次の要件を満たせば,月単位で設定された締切対象期間の末日に当該役務が提供されたものとする。
@ 下請代金の支払いは,月単位で設定される締切対象期間の末日までに提供した役務に対して行われることがあらかじめ合意され,その旨が3条書面に明記されていること。
A 3条書面に,当該期間の下請代金の額(算定方法も可)が明記されていること。
B 下請事業者が,連続して提供する役務が同種であること。
  したがって,この場合には,締切後60日(2か月)以内に下請代金を支払わなくてはならない。
なお,個々の役務が連続して提供される期間が1か月未満の役務提供委託の場合には,当該期間の末日に役務が提供されたものとする。
● 金融機関の休業日
下請代金を毎月の特定日に金融機関を利用して支払うこととしている場合に,当該支払日が金融機関の休業日に当たってしまうことがある。このような場合,支払日が土曜日又は日曜日に当たるなど順延する期間が2日以内である場合であって,親事業者と下請事業者との間で支払日を金融機関の翌営業日に順延することについてあらかじめ合意・書面化されている場合には,結果として受領から60日(2か月)を超えて下請代金が支払われても問題はない。なお,順延後の支払期日が受領から60日(2か月)以内となる場合には,下請事業者との間であらかじめその旨合意・書面化されていれば,金融機関の休業日による順延期間が2日を超えても問題はない。
カ 割引困難な手形の交付の禁止(第4条第2項第2号)
  親事業者は下請事業者に対し下請代金を手形で支払う場合,一般の金融機関で割り引くことが困難な手形を交付すると本法違反となる。
● この規定が設けられたねらい
下請代金が銀行等の一般の金融機関において割引を受けることが困難な手形で支払われることにより,下請事業者の利益が不当に害されることを防止するためである。
● 一般の金融機関
「一般の金融機関」とは,銀行,信用金庫,信用組合,商工組合中央金庫等の預貯金の受入れと資金の融通を併せて業とする者をいい,貸金業者は含まれない。
● 割引困難な手形
「割引を受けることが困難であると認められる手形」を一律に定義することは難しいが,一般的にいえば,その業界の商慣行,親事業者と下請事業者との取引関係,その時の金融情勢等を総合的に勘案して,ほぼ妥当と認められる手形期間(現在の運用では繊維業は90日,その他の業種は120日)を超える長期の手形と解される。
キ 購入・利用強制の禁止(第4条第1項第6号)
親事業者が,下請事業者に注文した給付の内容を維持するためなどの正当な理由がないのに,親事業者の指定する製品(含自社製品)・原材料等を強制的に下請事業者に購入させたり,サービス等を強制的に下請事業者に利用させて対価を支払わせると購入・利用強制となり,本法違反となる。
● この規定が設けられたねらい
本号は,正当な理由がある場合を除き,親事業者が指定した物(役務)を下請事業者に強制して購入させることを禁止するものであり,親事業者が自社商品やサービス等を下請事業者に押し付け販売することを防止するためである。
● 対象
平成15年改正前の本法では,購入強制が提供となるのは,「物」の購入強制に限られていたが,役務の利用強制が加わり,自社が指定する保険,リース,インターネット・プロバイダ等のサービスの利用を強制した場合にも本法第4条第1号第6号違反となることとなった。
自社が指定する物又は役務であるから,自社の商品のみではなく自社以外の商品の購入を強制した場合も含まれる。例えば,自社製品の販売先である特約店,卸売店等にある自社商品,自社の取引先の商品,子会社・関係会社の商品なども含まれる。
● 強制
自己の指定する「物」又は「役務」を「強制して購入・利用させる」ことが禁止されているのであるから,「強制して」ではなく任意に購入等を依頼する場合は本号に該当しないが,下請取引においては,親事業者が任意に購入等を依頼したと思っても下請事業者にとっては,事実上,その依頼を拒否できない場合もあり得るので,実質的に下請事業者が購入等を余儀なくされたか否かが判断の基準となる。
● 次のような方法で下請事業者に自己の指定する物の購入・役務の利用を要請することは,購入・利用強制に該当するおそれがある。
(ア) 購買・外注担当者等下請取引に影響を及ぼすこととなる者が下請事業者に購入・利用を要請すること。
(イ) 下請事業者ごとに目標額又は目標量を定めて購入・利用を要請すること。
(ウ) 下請事業者に対して,応じなければ不利益な取扱いをする旨示唆して購入・利用を要請すること。
(エ) 下請事業者が購入・利用する意思がないと表明したにもかかわらず,又はその表明がなくとも明らかに購入・利用する意思がないと認められるにもかかわらず,重ねて購入・利用を要請すること。
(オ) 下請事業者から購入する旨の申出がないのに,一方的に下請事業者に物を送付すること。
ク 不当な経済上の利益の提供要請の禁止(第4条第2項第3号)
  親事業者が,下請事業者に対して,自己のために金銭,役務その他の経済上の利益を提供させることにより,下請事業者の利益を不当に害すると本法違反となる。
● この規定が設けられたねらい
正当な理由がないのに,下請事業者が親事業者のために協賛金,従業員の派遣等の経済上の利益を提供させられることにより,下請事業者の利益が不当に害されることを防止するためである。
● 金銭,役務その他経済上の利益
「金銭,役務その他の経済上の利益」とは,協賛金,従業員の派遣等の名目の如何を問わず,下請代金の支払とは独立して行われる金銭の提供,作業への労務の提供等を含む。
● 下請事業者の利益を不当に害する
下請事業者が,「経済上の利益」を提供することが製造委託等を受けた物品等の販売促進につながるなど,提供しない場合に比べて直接の利益になるものとして,自由な意思により提供する場合には「下請事業者の利益を不当に害する」ものではない。しかし,下請事業者が「経済上の利益」を提供することが,下請事業者にとって直接の利益となる(提供することによる利益が不利益を上回る)ことを親事業者が明確にしない場合(虚偽の数字を示して提供させる場合も含む。)には,「下請事業者の利益を不当に害する」ものとして問題となる。
● 次のような方法で自己のために経済上の利益の提供を要請することは,不当な経済上の利益の提供要請に該当するおそれがある。
(ア) 購買・外注担当者等下請取引に影響を及ぼすこととなる者が下請事業者に金銭・労働力の提供を要請すること。
(イ) 下請事業者ごとに目標額又は目標量を定めて金銭・労働力の提供を要請すること。
(ウ) 下請事業者に対して,要請に応じなければ不利益な取扱いをする旨示唆して金銭・労働力の提供を要請すること。
(エ) 下請事業者が提供する意思がないと表明したにもかかわらず,又はその表明がなくとも明らかに提供する意思がないと認められるにもかかわらず,重ねて金銭・労働力の提供を要請すること。
● 知的財産権の譲渡における本法第4条第1項第5号(買いたたきの禁止)の規定との関係
情報成果物等の作成に関し,下請事業者の知的財産権が発生する場合があるが,下請事業者の給付の内容に知的財産権を含まない場合において,下請事業者に発生した知的財産権を,作成の目的たる使用の範囲を超えて親事業者に無償で譲渡・許諾させることは,本号の対象となる。
なお,下請事業者の給付の内容に下請事業者に発生した知的財産権を含むこととし,3条書面に明確に記載した場合においても,当該知的財産権の対価について,下請事業者と協議することなく,一方的に通常支払われる対価より低い額を定めることは買いたたきとして問題となるおそれがある。
ケ 不当な給付内容の変更及び不当なやり直しの禁止(第4条第2項第4号)
  親事業者が下請事業者に責任がないのに,発注の取消若しくは発注内容の変更を行い,又は受領後にやり直しをさせることにより,下請事業者の利益を不当に害すると本法違反となる。
● この規定が設けられたねらい
親事業者が下請事業者に対して,費用を負担せずに発注の取消しや発注内容の変更を行い,又はやり直しをさせることは,下請事業者に当初の発注内容からすれば必要ない作業を行わせることとなり,それにより下請事業者の利益が損なわれるので,これを防止するためである。
● 「給付内容の変更」「やり直し」とは
「給付内容の変更」とは,給付の受領前に,3条書面に記載されている委託内容を変更し,当初の委託内容とは異なる作業を行わせることである。発注の取消(契約の解除)も「給付内容の変更」に該当する。また,「やり直し」とは,給付の受領後に,給付に関して追加的な作業を行わせることである。こうした給付内容の変更ややり直しによって,下請事業者がそれまでに行った作業が無駄になり,あるいは下請事業者にとって当初の委託内容にはない追加的な作業が必要となった場合に,親事業者がその費用を負担しないことは,下請事業者の利益を不当に害することとなるものである。
「給付内容の変更」又は「やり直し」のために必要な費用を親事業者が負担するなどにより,下請事業者の利益を不当に害しないと認められる場合には,不当な給付内容の変更及び不当なやり直しの問題とはならない。
また,次の行為も原則として「給付内容の変更」又は「やり直し」に含まれる。
(ア) 下請事業者の給付の受領前に,下請事業者から委託内容を明確にするよう求めがあったにもかかわらず親事業者が正当な理由なく仕様を明確にせず,下請事業者に継続して作業を行わせ,その後,給付の内容が委託内容と異なるとすること。
(イ) 取引の過程において,委託内容について下請事業者が提案し,確認を求めたところ,親事業者が了承したので,下請事業者が当該内容に基づき,製造等を行ったにもかかわらず,給付内容が委託内容と異なるとすること。
(ウ) 発注後に,恣意的に検査基準を変更し,従来の検査基準で合格とされたものを不合格とすること。
● 下請事業者の責に帰すべき理由
「下請事業者の責に帰すべき理由」があるとして,親事業者が費用を全く負担することなく,下請事業者に対して「給付内容の変更」又は「やり直し」をさせることが認められるのは,次の場合に限定される。
(ア) 下請事業者の要請により給付の内容を変更する場合。
(イ) 給付を受領する前に下請事業者の給付の内容を確認したところ,給付の内容が注文とは異なる又は給付に瑕疵等があることが,3条書面に照らして合理的に判断されるので内容を変更させる場合。
(ウ) 3条書面に照らして,注文と異なるもの又は瑕疵等があるものが給付されたのでやり直しをさせる場合。
● やり直しをさせることのできる期間
(ア) 直ちに発見できる瑕疵の場合
通常の検査で直ちに発見できる瑕疵の場合,発見次第速やかにやり直させる必要がある。
(イ) 直ちに発見できない瑕疵の場合
通常の検査で発見できない瑕疵で,ある程度期間が経過した後に発見された瑕疵については,その瑕疵が下請事業者に責任があるものである場合は,当該物品等の受領後1年以内のやり直しは問題ないが,1年を超えた後にやり直させると本法違反となる。
ただし,親事業者がユーザー等に対して1年を超えた瑕疵担保期間を契約している場合に,親事業者と下請事業者がそれに応じた瑕疵担保期間をあらかじめ定めているのであれば,当該期間内のやり直しは問題ない。
● 本法第4条第1項第4号(返品の禁止)の規定と「やり直し」との関係
受領した物品等を返して,再び受け取らないことが「返品」に該当する。受領した物品等を一旦下請事業者に返していても,それを修補させて再納入させたり,良品に交換させたりすることは「やり直し」に該当する。
● 放送番組等の情報成果物作成委託における「給付内容の変更」「やり直し」
放送番組等の情報成果物作成委託において,下請事業者が作成した情報成果物が親事業者の注文を満たしているかどうかは,親事業者の価値判断等により評価される部分があり,事前に給付を充足する条件を明確に3条書面に記載することが不可能な場合がある。このような場合において,親事業者が,給付の受領の前後を問わず,3条書面上は必ずしも明確ではないが下請事業者の給付が注文と異なる又は注文した水準に至っていないとし,やり直させたり追加の作業をさせることは,親事業者がやり直し等をさせるに至った経緯等を踏まえ,やり直し等の費用について下請事業者と十分な協議をした上で合理的な負担割合を決定し,それを負担すれば,本法違反とならない。ただし,親事業者が一方的に負担割合を決定することにより下請事業者に不当に不利益を与える場合には,本法違反となる。
なお,この場合においても,以下に該当する場合には,親事業者が費用の全額を負担することなく,下請事業者の給付が注文と異なる又は注文した水準に至っていないことを理由としてやり直し等を要請することは認められない。
(ア) 下請事業者の給付の受領前に,下請事業者から委託内容を明確にするよう求めがあったにもかかわらず親事業者が正当な理由なく仕様を明確にせず,下請事業者に継続して作業を行わせ,その後,給付が注文と異なる又は注文した水準に至っていないとする場合。
(イ) 取引の過程において,委託内容について下請事業者が提案し,確認を求めたところ,親事業者が了承したので,下請事業者がそのとおりに作成したにもかかわらず,給付が注文と異なる又は注文した水準に達していないとする場合。
(ウ) 発注後に,恣意的に検査基準を変更し,従来の検査基準で合格とされたものを不合格とする場合。
(エ) 下請事業者の給付が注文と異なる又は注文した水準に至っていないことを直ちに発見できない場合に,給付の受領後1年を経過した場合(ただし,親事業者がユーザー等に対して1年を超えた瑕疵担保期間を契約している場合に,親事業者と下請事業者がそれに応じた瑕疵担保期間をあらかじめ定めている場合を除く。)。
● 「書面の交付」と「取引記録の保存」
取引の過程で,3条書面に記載されている委託内容を変更し又は明確化した場合には,親事業者は,これらの内容を記載した書面を下請事業者に交付する必要があり,法第5条の規定に基づき作成・保存しなければならない書類の一部として保存する必要がある。
また,情報成果物作成委託において,事前に委託内容を充足する条件を明確に3条書面に記載することが不可能な場合に,3条書面上は必ずしも明確ではないが下請事業者の給付が注文と異なる又は注文した水準に至っていないとし,やり直させたり追加の作業をさせた場合には,親事業者は,これらの内容を記載した書類を保存する必要がある。
コ 報復措置の禁止(第4条第1項第7号)
  親事業者が,下請事業者が親事業者の本法違反行為を公正取引委員会又は中小企業庁に知らせたことを理由として,その下請事業者に対して取引数量を減じたり,取引を停止したり,その他不利益な取扱いをすると本法違反となる。
● この規定が設けられたねらい 下請事業者が親事業者の報復を恐れず公正取引委員会や中小企業庁に対し,親事業者の本法違反行為を申告できるようにすることをねらいにしている。
サ 有償支給原材料等の対価の早期決済の禁止(第4条第2項第1号)
  親事業者が下請事業者の給付に必要な半製品,部品,付属品又は原材料を有償で支給している場合に,下請事業者の責任に帰すべき理由がないのにこの有償支給原材料等を用いて製造又は修理した物品の下請代金の支払期日より早い時期に当該原材料等の対価を下請事業者に支払わせたり下請代金から控除(相殺)すると本法違反となる。
● この規定が設けられたねらい
親事業者が有償で支給した原材料等の対価を早期に決済することは,支払遅延の場合と同様,下請事業者の受け取るべき下請代金の額が減少し,資金繰りが苦しくなるなど下請事業者が不利益を被ることになるので,これを防止するためである。
● 本法第4条第1項第6号(購入強制の禁止)の規定との関係
本号は,親事業者が原材料等を「自己から購入させた場合」に適用がある。すなわち,下請事業者が製造委託又は修理委託を受けた場合,納入すべき物品に必要な原材料等を親事業者から購入したときに本号の問題が生じるのであり,自己以外の者から購入させた場合には本号は適用されない。
なお,本法第4条第1項第6号(購入強制の禁止)の規定は,自己から購入させた場合及び自己以外の者から購入させた場合のいずれについても適用される。
● 下請事業者の責に帰すべき理由
「下請事業者の責に帰すべき理由」としては,次のような場合などが考えられる。
(ア) 下請事業者が支給された原材料等をき損し,又は損失したため,親事業者に納入すべき物品の製造が不可能となった場合。
(イ) 支給された原材料等によって不良品や注文外の物品を製造した場合。
(ウ) 支給された原材料等を他に転売した場合。
原材料等を有償で支給する場合,早期決済にならないようにするためには,有償支給原材料等を使って製造(又は修理)し,納入される物品の下請代金の支払制度や検査期間,下請事業者の加工期間を考慮して,下請代金の支払と有償支給原材料等の対価の決済が「見合い相殺」になる仕組みにしておくことが大切である。
● 控除
「控除」とは,下請代金の支払に当たり原材料等の対価を差し引くことのほか,原材料等の対価に充当することとして,支払期日に下請代金を全く支払わないことも含む。現実には,支払期日の到来している下請代金と相殺することにより控除する場合がほとんどであろうが,本号の目的は,事実上,支払期日に下請代金を支払わない行為を規制しようとするものであるから,相殺という民事法上の用語ではなく,控除という広い意味を指す用語が用いられている。
ア 報告・立入検査
(ア) 公正取引委員会
公正取引委員会は親事業者・下請事業者の双方に対し,下請取引に関する報告をさせ,立入検査を行うことができる。
(イ) 中小企業庁
中小企業庁も親事業者・下請事業者の双方に対し,下請取引に関する報告をさせ,立入検査を行うことができる。
(ウ) 当該下請取引に係る事業の所管官庁
親事業者又は下請事業者の営む事業を所管する官庁(例:運送・・・国土交通省,テレビ放送・・・総務省)も,中小企業庁等の調査に協力するため,所管事業を営む親事業者・下請事業者の双方に対し,下請取引に関する報告をさせ,立入検査を行うことができる。
イ 改善勧告等
  公正取引委員会は,違反親事業者に対して勧告等の行政指導を行う。勧告した場合は原則として事業者名,違反事実の概要,勧告の概要等を公表することとしている。
中小企業庁は,違反親事業者に対して,行政指導を行うとともに,公正取引委員会に対し措置請求を行うことができる。
●下請事業者が被った不利益の原状回復措置
・受領拒否・・・受領するよう勧告
・支払遅延・・・支払うよう勧告
●遅延利息(年14.6%)を支払うよう勧告
・下請代金の減額・・・減じた額を支払うよう勧告
・返品・・・返品したものを引き取るよう勧告
・買いたたき・・・下請代金を引き上げるよう勧告
・購入・利用強制・・・購入させた物を引き取るよう勧告
・報復措置・・・不利益な取扱いをやめるよう勧告
・早期決済
・割引困難な手形 下請事業者の利益を保護するために
・不当な利益の提供要請 必要な措置を採るよう勧告
・不当なやり直し等
●その他必要な措置(例)
・本法遵法管理体制を確立するよう勧告
・本法遵守マニュアルの作成及び社内に周知徹底するよう勧告
・その他必要な再発防止措置を採るよう勧告
ウ 罰則
  次のような場合は,行為者(担当者)個人が罰せられるほか,会社も罰せられることになる(50万円以下の罰金)。
(ア) 書面の交付義務違反
(イ) 書類の作成及び保存義務違反
(ウ) 報告徴収に対する報告拒否,虚偽報告
(エ) 立入検査の拒否,妨害,忌避
本法事件処理フローチャート
公 正 取 引 委 員 会
中 小 企 業 庁
(1) 関係規定
下請取引において,本法第3条の書面に記載すべき事項を書面に代えて電磁的方法によって提供することや下請取引の経緯を電磁的記録として作成・保存する場合には,親事業者は以下の規定等に沿って行う必要がある。
○ 本法第3条,第5条
○ 下請代金支払遅延等防止法施行令(以下「施行令」という。)
○ 下請代金支払遅延等防止法第3条の書面の記載事項等に関する規則(以下「3条規則」という。)
○ 下請代金支払遅延等防止法第5条の書類又は電磁的記録の作成及び保存に関する規則(以下「5条規則」という。)
○ 下請取引における電磁的記録の提供に関する留意事項(以下「留意事項」という。)
(2) 書面の交付に代えることができる電磁的記録の提供の方法及びその留意点
ア 下請事業者の承諾
(ア) 承諾の方法 親事業者は,下請取引において,本法第3条の書面に記載するべき事項を電磁的方法によって提供する場合には,あらかじめ,下請事業者に対して,使用する電磁的方法の種類(電子メール,ウェッブ等)及び内容(word2002,一太郎バージョン10以上などのファイルへの記録方法。)を示して,書面又は電磁的方法による承諾を得なければならない(法第3条第2項,施行令第2条第1項,3条規則第3条)。
(イ) 承諾の撤回等
親事業者は,下請事業者の承諾を得た後であっても,下請事業者から,書面又は電磁的方法により,電磁的方法による提供を受けない旨の申出があった場合には,親事業者は,下請事業者の申出以降の下請取引においては,書面に記載すべき事項を電磁的方法によって提供してはならない。ただし,下請事業者が,再び,電磁的方法による提供を受けることを承諾した場合には,親事業者は書面に記載すべき事項を電磁的方法によって提供することができる(施行令第2条第2項)。
(ウ) 留意事項
親事業者が下請事業者に対して,承諾しない場合には,取引の数量を減じ,取引を停止し,取引の条件又は実施について不利益な取扱いをすること等を示唆するなど承諾を余儀なくさせる場合には,本法及び独占禁止法上の問題が生じ得ることから,下請事業者の承諾を得るに当たっては,費用負担の内容,電磁的記録の提供を受けない旨の申出を行うことができることも併せて提示することが必要となる。なお,親事業者が今後の下請取引について書面の交付に代えて電磁的記録の提供を行うことを下請事業者から一括して承諾を得た場合には,製造委託等をする都度承諾を得る必要はない(留意事項第2−1)。
イ 書面の交付に代えることができる電磁的方法
(ア) 電磁的方法
下請取引において書面の交付に代えることができる電磁的方法は以下のとおりであり,いずれの方法を用いる場合であっても,下請事業者が電磁的記録を出力して書面を作成できることが必要となる(3条規則第2条)。
○ 電気通信回線を通じて送信し,下請事業者の使用に係る電子計算機に備えられたファイル(以下「下請事業者のファイル」という)に記録する方法(例えば,電子メール,EDI等)
○ 電気通信回線を通じて下請事業者の閲覧に供し,当該下請事業者のファイルに記録する方法(例えば,ウェッブの利用等)
○ 下請事業者に磁気ディスク,CD-ROM等を交付する方法
(イ) 留意事項
a 電子メールにより提供する場合
書面の交付に代えて電子メールにより電磁的記録の提供を行う場合は,下請事業者の使用に係るメールボックスに送信しただけでは提供したとはいえず,下請事業者がメールを自己の使用に係る電子計算機に記録しなければ提供したことにはならない。例えば,通常の電子メールであれば,少なくとも,下請事業者が当該メールを受信していることが必要となる(留意事項第1−1−(2))。
なお,携帯電話に電子メールを送付する方法については,携帯電話端末にメモリー機能が備わっており,下請事業者が所有する特定の携帯電話端末のメールアドレスに必要事項を電子メールで送付することが予め合意されているなど,下請事業者のファイルに記録する方法と認められる場合には,3条規則第2条第1項第1号イに規定する電磁的方法に該当する。
b 書面の交付に代えてウェッブのホームページを閲覧させる場合
書面の交付に代えてウェッブのホームページを閲覧させる場合は,下請事業者がブラウザ等で閲覧しただけでは,下請事業者のファイルに記録したことにはならず,下請事業者が閲覧した事項について,別途,電子メールで送信するか,ホームページにダウンロード機能を持たせるなどして下請事業者のファイルに記録できるような方策等の対応が必要となる(留意事項第1−1−(2))。
c ファックスで提供する場合
受信と同時に書面により出力されるファックスへ送信する方法は,書面の交付に該当するが,電磁的記録をファイルに記録する機能を有するファックスに送信する場合には,電磁的方法による提供に該当する(留意事項第1−1−(1))。
ウ 本法第4条及び独占禁止法上の留意事項
(ア) 費用負担
a 電磁的記録の提供に係るシステム開発費等
親事業者が下請事業者に電磁的記録の提供を行うため,システム開発費等親事業者が負担すべき費用を下請事業者に負担させることは,本法第4条第2項第3号(不当な経済上の利益の提供要請の禁止)又は独占禁止法第19条(一般指定第14項 優越的地位の濫用)に違反するおそれがある。ただし,「下請事業者の利用に応じて追加的に発生する費用」については,下請事業者が得る利益の範囲内での負担を求める場合は,例外的に認められる(留意事項第2−2−(1))。
「下請事業者の利用に応じて追加的に発生する費用」とは,例えば,親事業者が電子受発注に利用しているシステムにおいて,下請事業者に対して,統計情報,商品の需要予測等の情報も提供できる仕組となっている場合,下請事業者が,このような情報を利用することによって発生する費用などが該当する。
b 電子情報機器等の購入等
下請事業者が電磁的記録の提供を受けるために必要な通信機器,電子計算機等の機器,ソフトウェア等を購入することやインターネットプロバイダ,システムサービス事業者等からの役務の提供を受けることがある。このような場合において,親事業者が下請事業者に対して,書面の交付に代えて電磁的記録の提供を求めること自体は,直ちに,本法又は独占禁止法上問題となるものではないが,例えば,次のような場合には,本法第4条第1項第6号(購入・利用強制の禁止)又は独占禁止法第19条(一般指定第14項 優越的地位の濫用)に違反するおそれがある(留意事項第2−2−(2))。
○ 正当な理由がないのに,自己の指定する通信機器,電子計算機等の機器,ソフトウェア等を購入させ,又は自己の指定するインターネットプロバイダ,システムサービス事業者等からの役務の提供を受けさせること。
○ 親事業者が提供するシステムの一部の機能しか下請事業者が利用しないにもかかわらず,そのほとんどの機能を利用することを前提とした費用の負担を求めること。
c 通信費用等の負担
電磁的方法による提供に伴う通信費用を下請代金から減額するなどして下請事業者に負担させることは,本法第4条第1項第3号(減額の禁止)又は独占禁止法第19条(一般指定第14項 優越的地位の濫用)に違反するおそれがある。ただし,下請事業者が親事業者から送信された電磁的記録を受信するために要する通信費用について,あらかじめ下請事業者の承諾を受けたときは,この限りではない(留意事項第2−2−(3))。
(イ) 電磁的方法による提供を承諾しない下請事業者等への不利益な取扱い
電磁的方法による提供を行うことを承諾しない下請事業者又は書面の交付に代えて電磁的記録の提供を受けない旨の申出をした下請事業者に対し,不当に取引の条件又は実施について不利益な取扱いをすることは,独占禁止法第19条(一般指定第14項 優越的地位の濫用)に違反するおそれがある(留意事項第2−3)。
(ウ) 電磁的記録の提供を行うことができなかったときの措置
親事業者がシステムの故障等により下請事業者に対して,直ちに書面の交付に代えて電磁的方法により提供を行うことができない場合は,当該下請事業者に書面を交付する必要がある。また,電磁的方法による提供を行うに当たって,電磁的記録を送信し又は下請事業者が閲覧した場合であっても,下請事業者のファイルに記録されなかったときは,本法第3条に違反することとなるので,親事業者において下請事業者のファイルに記録されたか否かを確認することが必要となる。また,電磁的方法による提供を行うに当たって,当該電磁的記録が下請事業者のファイルに記録されなかった場合において,下請事業者が納期までに納品できないこと等を理由に,受領を拒否したり,下請代金の額を減じることは,本法第4条第1項第1号(受領拒否の禁止)及び第3号(減額の禁止)に違反する(留意事項第2−4)。
(3) 取引記録の作成・保存の要件(第5条関係)
下請取引の経緯に係る電磁的記録を作成・保存する場合には,公正取引委員会等の検査に当たって,その内容が容易に確認できるようにするため,以下の要件を満たす必要がある(5条規則第2条第3項)。
○ 記録事項について訂正又は削除を行った場合には,これらの事実及び内容を確認できること。
○ 必要に応じて電磁的記録をディスプレイの画面及び書面に出力することができること。
○ 下請事業者の名称等や範囲指定した発注日により,電磁的記録の記録事項の検索をすることができる機能を有していること。
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